今年買って読んでいないビジネス書の読書感想文3「サイコロジー・オブ・マネー」
今年買って読んでいないビジネス書が14冊もあるので、何でも良いので今年中に消化させる。
CTOのEwdisonからオススメされた本。
目次
重要な考え方とコンセプト
- (1章)自分が見聞きした小さな世界の出来事が、自身の考え方の8割以上を構成している
- (2章)人生も経済も運に左右されるものがとても大きい(カターニア大学論文「才能と運」でも明らか)
- (3章)比較したり、他人の評価に執着せず、自分のゴールポスト(=価値基準)をズラさない。その為に問う
- (5章)裕福であり続けるには、怖れを持ち、サバイブすることが重要で、それは複利の恩恵をもたらす
- (8章)人は高級車を眺めるが、そのドライバーを尊敬するわけではない。尊敬されたいオーナーにとってパラドックスである
- (9章)豊かさは目に見えない。買わなかったものは見えないのである。惑わされない
- (10章)貯蓄や定期的な積立投資は、コントロールが出来ることだ。出来ることをやろう
- (12章)投資はハードサイエンスではない。膨大な数の人々がそれぞれ限られた情報に基づいて不完全な意思決定を行っているに過ぎない
福利の魔法(4章)
氷河期と温暖化
氷河期は少なくとも地球誕生後5度発生している。
現状最も有力な仮説は以下である。
「太陽と月の引力によって、数万年周期発生する、地球軌道の傾斜のズレにより、被日照量が変化する」
数十年前はこの結果、猛烈に寒い冬が訪れると考えられていた。
しかしロシアのウラジミール・ケッペンが発表した最新の研究結果では
「わずかに涼しい夏が訪れるに過ぎない」
ということであった。
- 涼しい夏が発生すると、前年の雪や氷を溶かすことができない
- その年の冬は前年よりも更に、雪や氷が蓄積される
- この循環を繰り返す
これにより季節的な積雪が大陸を覆うほどの巨大な氷床となり氷河期が訪れる。
福利の凄さの例である。
※本書にて記載はなかったが、温暖化にもCO2由来ではなく、こうした仮説が存在していることを知った。
良い投資とは
「そこそこのリターンを繰り返し何度も手に入れ続けること」
と紹介されている。
我が社の事業構造は複利的かと考えてみた。
サブスクなので、コツコツ蓄積型ではある。
成長をグラフで示すと、ある一定時期までは、複利カーブを描くことは出来ると思う。
一定時期を超えると比例的になり、鈍化するはずだ。
全キャピタル、アセットを同じ比率でパフォーマンスさせるには、
事業選択が重要で、当たる当たらないは運の要素も多分にあるので、
生涯を通じて事業の創造と、実験を繰り返すことになるだろう。
テールイベントの重要性(6章)
「蒸気船ウィリー」に始まり赤字続きだったディズニーは「白雪姫と7人小人たち」でヒットを飛ばした。
たった1本で、それまで作った400本よりも多い収益をもたらしたのである。
こうした会社の運命を変えるきっかけをテールイベントと呼ぶ。
GAFAMの一角Amazonにおいては「アマゾンプライム」「AWS」がそれに当たる。
アップルならiphoneといった具合だ。
重要なのは、上手くいかない時に、一定の合理的な行動が出来るかどうかである。
ナポレオンは天才的な軍人の定義を以下の様に述べている。
「周りの人間が正気を失っている時に、普通のことができる者」
テールイベントが訪れるまでは、粛々と事業創造と実験を繰り返すべきなのである。
自由(7章)
お金がもたらすも最大の価値は自由。
言い換えると「自由には責任が伴う、近現代においてはお金で責任を取れる(ことが多い)」
ということではなかろうか。
ミシガン大学の心理学者キャンベルがうつ病の研究の過程で、
人間に幸福感をもたらす信頼性の高い要因は
「人生を自分でコントロールしている」
というはっきりした感覚があることを挙げている。
つまり人は運転席に乗りたいのであって、他人から何かを強制された時、途端に力を失う。
ふいに母に「勉強しなさいと」言われてやる気をなくしたことを思い出す。
また、カール・ピレマーは著書の中で含蓄に富んだコメントを残している
「子どもたちは、親のお金を欲しがったりしない。子どもたちはただ、親が一緒にいてくれることを望んでいるのだ」
合理的>数理的(11章)
発熱は身体の免疫系を活性化してくれるが、患者にとって辛いものだから、医者は解熱剤を合理的に処方する。
数学的な正解は発熱を放っておくである。
人はしばしばこういった判断をする。投資でも同じである。
ただし、合理的な判断が数理よりも劣っているわけではない。
例えば投資資産を好きになると、資産を長期で持つ。
数理的な投資家は、購入時よりも何々%資産価値が下落すると、短期でロスカットする。
しかし、長期でもつことにより、最終的に勝つケースは決して少なくない。
誤りの余地(13章)
カードカウンティングが必ずしも上手くいかないという話。
2014年にそのモドキをやったら、ブラックジャックトーナメント準決勝をブッちぎり1位で通過した。
しかし、決勝ではそれは功を奏さず、なんだ準決勝は「まぐれか」と残念に思ったことを思い出した。
理論や確率はあくまで、可能性(=反証可能性を残した仮説)であって完全ではない。
事業に置き換えると、キャッシュを潤沢に持つことの重要性に触れていた。
ただし、ロシアンルーレットの様に、いくら確率が低くても、
失敗した時に二度と立ち上がれない選択や投資はしないことが重要である。
この世に無料なものはない(15章)
例えば車が欲しいとき
- 新車を買う
- 中古車を買う
- 盗む
という選択がある。
これを投資的に置き換えると
- 新車:ボラリティや混乱を受け入れる
- 中古車:利回りが少ないが安定した投資資産に運用
- 盗む:リターンは得てもそれに伴うボラリティは避けようとする
ということだそうだ。
要はリスクを負わずリターンだけを求める「泥棒」になるなということだ。
余裕を持って不測の事態(コストが余計に掛かったり、時間が掛かりすぎるなど)を受け入よう。
それは投資の世界では罰金ではなく、入場料である。
これは、起業やビジネスでも同じであると思う。
市場のゲーム(16章)
違うゲームをしている人の真似をしてはいけない。
長期スパンの投資と短期スパンの投資スタイルは全く違うからだ。
お金は儲かるところに引き寄せられる法則がある。
儲かっている情報に皆が飛びついて投資するからだ。
これが過剰になるとバブルを引き起こす。
バブルとは市場に短期スパンの投資家が集中している状態である。
悲観主義の誘惑(17章)
楽観主義とは
最初に、楽観主義は「すべてがうまくいく」とたかをくくることではない。
それは慢心である。
真の楽観主義とは「たとえ途中で挫折することがあっても、長期的に見れば良い結果が得られる確率が高いと信じること」だ。
悲観主義は人を魅了する
「1年位以内に10倍になる株がある」と言われると無条件に怪しいと思う。
「君が株を持っている会社が不正会計で倒産するかもしれない」と言われると、不安になる。
次の世界恐慌が来ると喧伝すると、取材は殺到するが、
市場はまだまだ伸びると喧伝しても、取材は来ない。
我々のサバンナ脳は、「世の中は恐ろしいものだ」と考えることで、慎重になり生存確率を上げてきたのではないか。
更に、進歩はプロセスであり気づき辛いが、悲劇は結果であり一瞬で広まる為、人は悪いニュースほど敏感になる。
投資では、悲劇に基づいた短期判断よりも、進歩に基づいた長期プロセスが良い。
何でも信じてしまう時(18章)
人はファクトよりストーリーを信じる。
「自分が真実であって欲しいことを真実だと思う」という性質が人間にはあるのだ。
背景には、限られた世の中への解釈や情報で世界を説明しようとしているからであろう。
そして根底には「自分たちは予測とコントロールが可能な世界に住んでいると信じたい」からではないか。
だから時としてファクトから目を背ける。そうでなければ不安でしょうがないのだろう。
だから、ちょっと勇気を出して開かれた世界を曇りなき眼で見るべきなのだ。
まとめ
自身が持っている情報や経験は一部であり、その中でコントロール可能な世界を自分で創り出している。
本当に大事なのは、自身の価値観(ゴールポスト)を見極めズラさず、長期的にサバイブすることだ。
事業においては、不確実性を受容しながら、ちょっと勇気を出して事業を創造し、
実験を繰り返し長期的に複利で勝負することが要諦である。