話題のミステリー「変な家」を読んで


横浜線車内の広告で紹介されており、思わず見てしまった。

「今売れてます」ということと、共に「あなたにはこの家の謎が解けますか?」と間取りが示されていた。ぼんやり見ても、特に何も思わなかったが、実際に自分がお宅訪問したつもりで見ると、気色の悪い事実を発見する。

そんな具合で電車を降りたのだが、後日書店で平積みされており、思わず購入。

感想を述べさせてもらうと「ふむふむ。ふーん(ちょっと怖い)」だった(失礼)。

導入があって、主人公が謎に対して仮説を唱えつつ、真相に辿り着く。という至極一般のミステリーの流れであって、その中に目新しいものはなかった。真相から香る”金田一感”も既視感があった(すみません)。

ただし、ちまたで10万部以上売れていることや、自分自身も惹き込まれて一気に読んだことに対して、どこに魅力があるのかを探ってみた。

自分の中での結論はやはり「間取り図から物語が始まる」という斬新さに他ならなかった。

普通小説の中では、家の描写を「間取り図」を使って行わない。情景描写は文字でやるのが普通だ。ただし文字で行った場合空間認知は読者によってまちまちで、ある人の頭の中には鬱屈とした居間の風景が、もしかしたら他の人にカラフルに映っているかもしれないし、はたまた人によっては「そんな部屋あった?」といった具合だろう。

この本では読者が間取り図を

  • よく見る
  • 家の中を想像する
  • 違和感に気づく

という状況から読書がスタートするので「違和感の正体が気になってしょうがない」からページをめくり始めるのだ。

そして間取りに関する新たな秘密を発見する度に、小説の主人公と共に自身も恐れおののいている。この時の感覚はちょっと不思議なもので、この間取りがどこかに存在している「事実」であるかのように錯覚している。あまりに、ありありと家の内部を想像したからだと思うが、まるで何か本当の事件を見ている様な気分になる。

この本はフィクションだと思うのだが、はっきりその辺が明示されておらず、「◯◯県(詳細を伏せるため)」みたいな表現も文中であって、一瞬「あれっこれ実話ベースなの?」と思わせてくれる仕掛けがある。

第二弾があっても僕はきっと読まないが、気になる方は是非一度間取りを眺めてみて欲しい。そして気になったら最後。結末まで続く、疑問の連続にページめくりが止まらないはずだ。

とても面白い体験だった。