去年買って読んでいないビジネス書の読書感想文4「サクッとわかるビジネス教養 行動経済学」
今年買って読んでいないビジネス書が14冊もあるので、何でも良いので今年中に消化させる。
※14は無理なので、7冊くらいにすることにした。
行動経済学とは
旧来型の経済学では、ホモ・エコノミカスという消費者を想定して展開されていた。
ホモ・エコノミカスの特徴は、超合理的。超利己的。超自制的に意思決定するというものだ。
しかし、実際の消費者行動はもっと複雑である。
その行動パターンについて、従来型の経済学プラス心理学を元に構築された学問が行動経済学である。
既にプロスペクト理論やナッジ理論などで3名の「ノーベル経済学賞」受賞者を輩出している。
1章:ヒューリスティック
ヒューリスティックの対立概念はシステマティック(ホモ・エコノミカスの行動原理)である。
ヒューリスティックとは、
- 人は超合理的に判断せず、経験に基づいたバイアスで判断をする
- あまりにも情報過多である為、シンプルに判断する時に、情報を限定的に捉えてサクッと判断する
などのパターンがある。
価格が安いものは、ヒューリスティックで判断しがちで、
価格が高いものはシステマティックで判断する傾向のことを二重過程理論と呼ぶ。
1_利用可能性ヒューリスティック
人は記憶にのこっている(構築済みの理論)を信用する性質を差している。
選択的知覚(カクテルパーティー効果)*
自身にとって興味関心があるフレーズは例え騒然としたカクテルパーティー会場でも聞き取れるというものだ。
そうした性質を利用して以下の様に広告上で活用する。
- 「○○なあなたへ」というフレーズを提示することで、自分のことだと思わせる(スポットライト効果)
韻踏みの効果*
「セブンイレブンいい気分」の様にキャッチコピーで韻を踏むと覚えやすい。
人は記憶に残っているものを信用する性質がある為、覚えてもらう為に活用。
単純接触効果
接触回数が多い営業マンを信頼する傾向がある。
2_代表性ヒューリスティック
人は少ないサンプルで判断しがちであるというもの。
以下の様な性質や理論がある。
少数の法則*
サンプルが少なくても確率化されると信じる。
フレーミング的な数値の表現で利用。
平均への回帰
確率は平均に収束していくというもの。
ステレオタイプ
典型例でイメージしてしまう性質。
ギャップの演出を行うケースが有効になることも。
初頭効果*
最初の印象が重要である。
ハロー効果と似た概念。
ピークエンドの法則*
終わりよければ全て良しという諺の通りで、商談であれば最後のイメージが尾を引くということ。
長文の広告においては論旨をまとめてあげるなどが有効。
タイムプレッシャー*
残り何分などの訴求を行うこと。
3_固着性ヒューリスティック
自分に都合の良い情報ばかり集めてしまう性質(確証バイアス)のこと。
ハロー効果*
- 人気タレントをCMで利用する
- MVで信頼してもらう為の情報を訴求
プラシーボ効果
偽薬効果とも呼ばれる。思い込みの力は強い。
サンクコスト効果*
既に掛けたコスト(時間や費用)を高く見積もってしまう性質。
- イケア効果(手間がかかる方が価値を感じる)
- 現状維持バイアス
- 保有効果(既に保有しているものの価値を高く感じる)
例:来年の○月○日満50歳まで無料で受診できます - 全額返金キャンペーン
フレーミング効果*
同じファクトでもどういうフレームを提示するかが重要だという理論。
例えば「90%の確率で駄目だ」と伝えるよりも「成功の可能性は10%ある。皆でやろう」と伝えた方が周りは鼓舞される。
- 1ヶ月後に提出してくださいよりも、4週間しかないが、対応してくださいが効果あり
- 120円の2割引よりも、全商品100円の方がインパクトあり
- 端数価格(2000円でなく、1980円)
アンカリング効果*
基準値を意識させて、その後、基準値を元にしたオファーをすること。
- 全体像を提示した後に、一部の仕事だけ依頼
- 定価定時後の割引価格提示
極端の回避効果*
おとり効果など。松竹梅など真ん中の選択肢を用意することで、極端な選択をしなくて済む。
4_時間的選好
現在価値を最も重視するという性質。
現在バイアス
例えば、ダイエットの方が長期的には価値があるが、短期的には今ケーキを食べることの価値が上回ると感じる。
その結果「選好の逆転」という現象が発生。
解釈レベル理論
時間割引というロジックある。
マリッジブルーなどはこの論理に当てはまる。
- 時間が遠いものは高次解釈する(素敵な新婚生活)
- 時間が近くなると低次解釈する(準備が面倒)
5_社会的選好
人の目を気にするという性質。
スノッブ効果*
人と違うものを選びたいという性質。
- パッケージを差別化
- パッケージで高級感を
同調効果(ハーディング効果 / バンドワゴン効果)*
みんなと一緒だと安心という性質。
- 9割のお客様が選んでいるのはコチラの商品です
- 手伝ってくれませんか?(ちなみに、みんな手伝ってくれています…)
- たばこの吸殻入れを投票装置に
- 納税の書類に「ほとんどの人が期限までに納付しています」
- クラウドファンディングは他の人の支援額がわかる
ヴェブレン効果(威光価格)*
50万円、1600万円などキリの良い数字を提示することで、高級感を演出することができる。
互恵性
相手にお返しして欲しい。お返ししなければという心理。
お返ししなければという心理を返報性と呼ぶ。
ライザップなどのダイエットジムは、
- パーソナルトレーニングジムのコーチのサポートに応えたいという気持ち
- コミットメント(約束)をしたから糖質制限メニューを食べ続ける
という返報性を利用している。
利他性*
他者に貢献したいという性質。
- 納税の書類に「税金はこのように活用されています」という訴求を入れる
- クラウドファンディングにより社会貢献できているという感覚を与える
社会的規範
調理に手のかかるホットケーキミックスが売れたのは、手抜きじゃないと家族にアピールしたかった母親の心理から。
2章:プロスペクト理論
人は得と損を合理的に判断できない。
1_価値関数
得よりも損を重く感じる思考性質。
1000円拾ったことよりも、1000円なくしたことの方が2.25倍悲しい。
得をする時は、リスクを避ける傾向があり、
絶対に100万円貰える方が、50%の確率で200万円貰えるよりも選ばれる。
損失回避性*
損失の方が2.25倍もインパクトがあるので、それを回避しましょうというオファーをする。
- 今決めないと、他のお客様が決めてしまうかもしれませんといった訴求
- 購入しないと、デメリットが発生するなどネガティブな情報を与える
などの方法論としても利用されている。
リスク志向的
ギャンブルで負けが混むと、取り返そうとリスクを取りたがる姿勢のこと。
これはサンクコスト的な性質とも関連している。
損得が大きくなると感覚が鈍る
例えば中小企業の社長にとって、100万円や1000万円について非常に敏感である。
しかし、10億円儲かる話と15億円儲かる話については同じ様に感じてしまう(=鈍くなってしまう)現象。
保有効果
既に持っているものの価値の方が高く感じられるというもの。
マグカップの価値について、保有群の方が悲保有群よりも高い値段を付けた実験より。
2_参照点*
それぞれの基準に応じて喜怒哀楽が発生するというもの。
ボーナスが貰えないと思っていた人は5万円で大喜びするが、10万円貰えると思っていた人は5万円だとがっかりする。
期待値と結果の差による影響を「コントラスト効果」と呼ぶ。
3_確率荷重関数*
宝くじのような低い確率を過大評価する。
飛行機事故や成功率99%の手術について過小評価して心配になってしまう。
4_前処理
メンタルアカウンティング(感覚的な家計簿の状態認識)によって、お金の使い道を決定するというもの。
メンタルアカウンティングの最適化*
資産状況を整理整頓してあげた上で、合理的判断を促す。
ハウスマネー効果*
あぶく銭は消費に回りやすい。
例:補助金を使った提案は通りやすい。
3章:ナッジ理論
肘で軽くこづくように、人の選択を促すことが出来るという理論。
社会的証明
他人の行動を参考にする傾向。
※同調効果(ハーディング効果 / バンドワゴン効果)にて解説
フレーミング効果
※固着性ヒューリスティックにて解説
アンカリング効果
※固着性ヒューリスティックにて解説
損失回避
※価値関数(プロスペクト理論)にて解説
デフォルト*
デフォルト以外の行動は面倒で起こさないという性質を利用。
- オプトアウト(同意しない場合はチェックを外す)
- グーグルの社食でサラダを多く食べさせるためにディスプレイを工夫。肉のサイズもデフォルトで小さく
- 臓器提供の同意について(同意しない場合のみ記載サインさせる)
- あえて情報過多にすることで、約款などを読み込ませない
- たばこを取り出すことを面倒な状況にする
簡素化と明確化*
- チョイスアーキテクチャ(選択肢の提示方法を工夫して選びやすく)
- イージーチョイス(最も簡単な選択肢を望ましい行動として提示)
- ポジティブな強化(望ましい行動に対する報酬を設定)
フィードバックとリマインダー
しかるべきタイミングでフィードバックやリマインダーを発動させ、行動を促す。