衝撃的な内容!欠乏の行動経済学「いつも時間がないあなたに」


役員の李に「人生で2冊オススメできるビジネス書があってその中の1冊です」と言われて読んだ書籍。

行動経済学とは、従来の経済学では説明できない事象を科学的に理解する為に作られた学問で、雑に言うと、経済学と心理学を組み合わせたもの。

欠乏とは?

欠乏状態は、障害認定レベルまでIQを大幅に下げる

まず結論から申し上げる。

金銭的ないしは、〆切に追われた欠乏状態に陥ると〆切仕事へのパフォーマンスは上がるが、それ以外の物事について著しく処理能力が損なわれる

その度合を実験によりIQで測定すると、

  • 優秀な人のIQが平均的な人以下に
  • 平均的な人のIQが知的障害との境界線に

落ちている。

欠乏状態になると、

  • 凡ミスが多発
  • ダイエット中なら、仕事に意識を持っていかれて、ダイエットがおざなりになる
  • 家族との時間が大事だとわかっていても、取ることが出来ない

これらは、意思の問題ではなく、欠乏状態に陥ると誰しもこうなってしまうのだ。

著者は様々な事例を並べ立て、物事が「欠乏」によって説明ができると論じている。

欠乏状態の時、人はトンネリングを起こしているという。

この前丁度フットサルをやったのだが、欠乏とトンネリングの観点からプレーを見てみると面白い。

自陣でボールを保持している時、敵のプレッシャーが弱ければとても良いパスを出せる人がいた。しかし、相手がプレシャーを強めに掛けてくるチームの場合、その人は四苦八苦して視線が足元に集中していた。当然パスコースも相手に読まれてしまう単調なものになっている。

足元の技術に余裕があれば、彼は変わらず良いプレーが出来ていたであろう。しかし、迫りくる敵によって、欠乏状態になった為「相手をかわす」というトンネリングに入った為視野が狭くなってしまった。

欠乏は更なる欠乏を生み、抜け出すのは容易でない

ひとたび欠乏状態になると容易に抜け出せない。

ギリギリのスケジュールで仕事をしている人は、1つの予定が狂うだけでその後の予定全てが狂う。

欠乏した経営者は、従業員へ発破をかける。発破を掛けられた従業員は欠乏して処理能力が下がる。気がつけば会社には(トンネリングを起こしている為)短期的な視点で仕事を上手くこなすことはできるが、その他のことはてんで駄目な人しかいなくなる。何より経営者自身がそういうことになってしまう。

私はこのことをアホアホダンスと呼ぶ。

処理能力は有限。仕事はスケジュール管理だけでは上手くいかない

欠乏が欠乏を呼ぶ負のスパイラル構造は、この「処理能力」の認識が甘いことも一役買っている。

ビジネスマンはスケジュール管理を行う。2時間くらいかかるデスクワークがあればその時間をロックして作業に充てるわけだ。

しかしここで見逃されているのは、欠乏状態の人には余分な処理能力など残っていないという点だ。

Aでトンネリングを起こしている人間は1日に使える自身の処理能力をAで使いはたしていて、BやCに使える処理能力がほとんどないのだ。

時間はあっても、処理能力がなければ人は仕事を進行することは出来ない。

欠乏とトンネリングが生み出す集中ボーナスという唯一のメリット

散々欠乏状態の悪口を紹介してきたが、唯一のメリットもある。既に何度か触れているが、欠乏してトンネリングを起こした人は、トンネルの中のことについては、パフォーマンスがアップする。〆切間近のレポートを処理する力は、1週間前よりもグンとあがるのだ。著者はこれを「集中ボーナス」と呼んでいた。

欠乏状態を抜ける方法論を検討してみる

この本が面白いのは、欠乏のメカニズムについてわかりやすく説明しているが、どうやって欠乏の罠から抜け出すのかという具体的な方法論は、それほど紹介されていない。しょうがないので本書を手がかりにいくつか方法を検討してみる。

スケジュールを詰めない

忙しい人にとっては身も蓋もない話だが、スケジュールを詰めないことは重要だ。

欠乏に陥らない為に著者は「スラック」が必要だと言っている。

要はスケジュールの余白のことで、何か問題があった時、緩衝材の様に受け止めることができる存在だ。

自発性を”排除”したリマインダー

週に一度ジムに行くと決めた人が、Googleカレンダーに、ジムの予定を毎週自動で設定したする。

しかしこれでは上手くいかない。

なぜならカレンダーを見て、最終的に「行くかどうかを決める」には本人の自発的な処理能力が必要になるからだ。繰り返しになるが欠乏した人には処理能力が残っていない。鋼の決意を遂行する処理能力が残っていないのだ。

著者がオススメしていたのは、パーソナルジムで予約をしていると、行かざるを得ないので、強制的にトンネルの外に一旦出れると指摘していた。

欠乏していない客観的な人の視点が必要とのことで、月1の経営コンサルとのミーティングなども同様の効果が期待できるだろう。

短期でなく、中長期の話しかしない時間を強制的に作るしかない。

自分の意思や処理能力とは関係ないリマインダーが必要である。

処理能力を考慮したスケジュールの入れ方に変える

処理能力は朝ゲージがマックスで、夜はすっからかんである。

朝に最もパフォーマンスが発揮できるので、ここは重要な仕事しか入れない。

経営を俯瞰して、中長期の戦略について考えたり、仕組みを作ったりすること以外は原則スケジュールを入れないことにする。Googleカレンダーも平日午前中は、黒塗りに変更する。

従業員を欠乏させない。アホアホ踊りに巻き込まない

従業員に無理なスケジュールを設定して、処理能力を落とさないことは経営者の重要な仕事だと思うようになった。これは以下「怒ったら負けなのか?」とテーマ的に重なる所もあるが、経営者が怒ると従業員が欠乏する。経営者が怒るはたいてい、欠乏しているからだ。予期できた問題も急なトラブルのように感じて「エライこっちゃ」と欠乏ダンスを踊り始め、従業員を巻き込んでいく。

多分やってたと思う。

いや絶対やってた

やめる。

【ビジネス編】怒ったら負けなのか?

鞭打つ集中ボーナスは成功体験にしてはいけない

鞭打って集中ボーナスを発揮させて成果を出させたことを「成功体験」だと思っている経営者が多いように感じる。その分社員の能力を失ったはずだし、そういう会社に限って離職率の高さで悩んだりしている。

集中ボーナスと標準化はセットで運用

とは言え、デスクワークにおいて、集中ボーナスを使わないのかと言えば、これは使って良いと思う。

格段に効率が良くなるからだ。

例を上げる。

今までこれで終わることが多かった。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」というやつだ。

この状況を是正する為に、事前フィードバックが出来ず自身で仕上げてしまったものは、週イチの会議にて、必ず標準化するようにしている。

要は作成されたレポートと自身のイメージのズレを明確にして次回からどういう方法論で対応するかを決めるのだ。