大将と参謀を兼務するベンチャー社長が陥る罠
以下備忘録的な記述であり、思考の整理整頓の為に文章化。
1.力の分散
が起きる。理由は以下。
- 新しいプロダクトの販売準備に伴いリソース不足が発生
- 更に複数同時に立ち上げニーズがありリソースはますます必要に
- リソース不足の中で優先順位が付けられず、個々のプロジェクトについての集中力や出力が弱まる
- 基幹事業においても競合は常に変化しており、競合優位性を作り続ける為の行動が必要である
2.硬直
戦線は拡大しているのに、人手不足だから、身動きが取れずに硬直してしまう。
そして硬直を打破すべく、案を作り行動に移すが日和見で定まらない。ブレる。
3.処方箋
大将と参謀の兼任者、つまり多くのベンチャー企業の社長は、決断して責任を取る大将業務と、作戦計画を立案する参謀業務の人格を分け、順番に留意して実行する。
- 順番1:大将から参謀へ作戦計画立案指示
- 順番2:参謀による作戦計画の立案(おおよそ3案)
- 順番3:大将による決断と実行指示
4.原因
問題の原因について、大将と参謀を兼務している場合、順番2が起点になっているような感覚を覚えるが、実際は逆で、順番1の視点を失ってはいけない。
参謀業務において日々、次から次へとアイディア(懸念事項の解消案)が出る。全て実行したくても当然そんなリソースはない。しかし最もやっかいなのは区切りがないということ。
大将と参謀を兼務している場合、日々選択肢が増えることによって、前日に行った決断を覆したくなってしまう。これが別々の二名で役割分担している場合、こうはならない。
- 4月10日大将がA案について決断
- 4月11日10:00 参謀がB案を追加奏上
- 4月11日14:00 大将がA案の作戦命令を却下して、B案を採用
- 4月12日10:00 参謀がC案を追加奏上
- 4月12日14:00 大将がB案の作戦命令を却下して、C案を採用
組織運営上こんな指揮命令では現場が混乱する。少なくとも本来の力を発揮できるはずがない。しかし、大将と参謀を社長が兼務している小さな組織の場合(こんなに短いスパンでないとしても)起案をすることと、決断をすることの区切りがないので、往々にしてこのトンチンカンな意思決定が行われる。
5.作戦計画の立案書のレシピ
上記について自分自身を戒めるとして、振り返りの中で思い出した作戦計画の要諦についても整理しておく。
昔、鶴舞図書館で「陸軍大学校の戦略・戦術教育」という本を借りて読んだことがあり、大変参考になった。起案のポイントについて示唆に富んでいたので改めて整理したいと思う。
以下は私の理解。
この本の内容は「特定のシチュエーションにいおて、どの選択をすることで、敵を撃破できるか、目標地点を確保できるか、兵力を温存できるかを考える思考実験的なもの」であった。
さらに、優先度について「一つ、目標地点の確保。二つ、兵力の温存。三つ、敵の撃破」と考え、これをビジネスに置き換えると以下の様になる。
「一つ、売上目標の達成。二つ、粗利率を維持した拡大。三つ、競合位性の確立」
硬直した欠乏的な状況の発想は、目先のことや懸念事項の解消という観点になりがちである。しかし、参謀的起案行為においては、戦略的目標地点の確保すなわち予算の達成や特定のKPIを軸として考えるべきである。